創業者利益とは、会社の創業者が株式公開に際して持ち株を売り出して得る利益のことです。
注目度の高いIPOは、公開時に投機が加わって企業の利益や成長性などから想定される価値よりも高くなる傾向があり、創業者利益は莫大なものとなることがあります。
■公募とは、売り出しとは
株式公開の際に放出される株式には、大きく分けて「公募」と「売り出し」の2種類があります。
「公募」とは、株式公開する企業が新規に株式を発行し、株主を公募することをいいます。
公募により調達した資金は、会社の自己資本に参入され、今後の会社の利益拡大に向けた設備投資や研究開発などに充てられます。
一方で、「売り出し」とは、会社の創業者が株式公開に際して持ち株を売り出すことであり、これは新規に株式が発行されるわけではなく、単に創業者が自分の利益を得るために行うものです。
■創業者利益は善か悪か
注目度の高いIPOは、公開時に投機が加わって企業の利益や成長性などからくる価値よりも高くなる傾向があり、創業者利益は莫大なものとなることがあります。
そのため、創業者利益は、IPOを目指す起業家にとってのモチベーションとして非常に大きなものがあります。
一方で、株式公開に際し、「公募」と比較して「売り出し」があまりにも多すぎると、単なる創業者利益の確定のための上場であると市場から見なされることもあります。
よく「上場ゴール」という言葉を聞きますが、「公募」と比較して「売り出し」があまりにも多すぎるような「上場ゴール」見え見えのIPOは、よほどIPO市場の地合いが良くなければ、人気化することはありませんので注意しましょう。
これは、IPOの銘柄選別の一つのメルクマールとなるでしょう。
即金規制とは、「新規上場銘柄の売買に関する規制措置」のことです。
具体的には、通常の銘柄は3営業日後に売買代金が決済されるのですが、即金規制された銘柄は買付時点(買い注文の時点)で「現金」がないと買えなくなります。
例えば、50万円のIPOを買い付けるために前日に50万円で保有株式を売却したとします。
売却金額は即時に買付余力に反映されますが、「現金」として口座に反映されるのは3営業日後になります。
即金規制がかかったIPOは、単なる買付余力ではなく「現金」として口座に反映された資金でなければ買い注文が出せなくなるのです。
ですから、上述の例の場合、たとえ50万円の買い付け余力があっても、50万円の現金口座残高がないと、買い注文が出せないわけです。
■IPOの即金規制の目的
有望で公開株数が少ないIPOは、投資家の人気が殺到しますので、上場時に極端な需給のアンバランスが発生し、価格の急騰を引き起こす場合があります。
まあ、これがIPO投資の醍醐味なのですが、上場時の極端な需給アンバランスのみで引き起こされた超高値は、企業価値に基づいていませんから、いづれ急落してしまいます。
こうなると、上場直後のIPOの株価は乱高下することになり、健全な市場が育成できません。
即金規制は、IPOが超人気化し上場初日に値が付かない場合に、買い手に制限を加えることで需要を抑え初値形成が過熱しすぎないようにすることを目的としているのです。
ストックオプションとは、企業が取締役や従業員に対して、将来その企業が成長し株価が上昇した際に企業の発行する株式をあらかじめ定めた安い価額で買い取ることができる権利を与えることを言います。
例えば、1株10万円のストックオプションが付与されていて、その企業が成長し、株価が50万円になったとします。
この場合、1株の時価が50万円の株を10万円で購入することができるので、ストックオプションを行使すれば40万円の利益を得ることができます。
ストックオプションには、会社の役員や社員に、会社を成長させようというインセンティブを与えるのに役立ちます。
また、創業間もないベンチャー企業は、資金力に乏しく、役員や社員に充分な報酬を与えることができないため、ストックオプションにより、報酬の代わりとするような場合もあります。
社員は、将来会社が成長を遂げたときに、莫大なキャピタルゲインを得ることができるわけです。
■ストックオプションがIPOに与える影響
IPOは、その会社の取締役や従業員に対して、公募価格に比べて非常に安い価格でストックオプションが付与されているケースが多く、上場後にこれらの株式が潜在的な売り需要になることが多いということに注意が必要です。
ですから、IPOの目論見書をチェックして、社員にストックオプションが大量に付与されていないか確認しておく必要があります。
オーバーアロットメントとは、IPO(新規公開株)において、主幹事証券が大株主から募集・売出し株数の15%を上限に株式を借り、上場予定株数を超えて追加的に公開価格で販売することです。
オーバーアロットメントは、「Over-allotment」と英語表記され、「over:超える」、「allotment:割り当て」、すなわち、株式の追加割り当てという意味です。
では、IPOでオーバーアロットメントが行われるどのような効果が発生するのでしょうか?
IPOのブックビルディングとは、IPOの抽選に応募する際に必ず参加しなければならない手続で、日本語では「需要申告」と訳されます。
ブックビルディングについては、例を示して解説した方がわかりやすいでしょう。
例えば、A銘柄というIPOのブックビルディングが、「仮条件1000~1200円」で行われていたとします。
これは何を意味するかというと、「A銘柄というIPOを1000~1200円の範囲内で投資家の皆さんはいくらなら買いたいですか?」という幹事証券会社からの問いかけです。
この問いかけに対して、投資家がどのような反応をするかで、証券会社がIPOの公募価格を決定するわけです。
IPOの目論見書とは、IPOの抽選に参加する際に必ず投資家が確認しなければならない、簡単に言えば「重要説明事項」を記述した資料です。
目論見書は、一般的に、ネット証券の場合は、証券会社の会員ページにおいてPDFファイルにより確認できます。
目論見書のPDFファイルを開き、内容を確認の上、「確認する」ボタンを押すと、目論見書を確認したことになります。
目論見書には、上場する会社の事業内容、業績状況、損益計算書・貸借対照表などの財務諸表の他、ベンチャーキャピタルの保有状況、ロックアップの有無、ストックオプションの発行状況、オーバーアロットメントの有無など、IPOの初値形成に大きな影響を与える情報がたくさん含まれています。
目論見書の内容を、一言一句詳細に確認することは難しいかもしれませんが、必要最小限の重要事項はきちんと確認しておくことが望ましいです。
IPOのロックアップとは、簡単に説明すれば株式公開以前からの主要株主に対し、「上場後〇ヶ月間は市場で保有株式を売却しない」ように規制をかけることです。
ロックアップとは、「Lock up」と英語表記され、鍵をかける、資本を固定するという意味になります。
一般的には、「主要株主の株売却や新規株式発行を180日間制限する」という契約内容となっていることが多いようです。
IPO株式を大量に保有する株主やベンチャーキャピタルなどが、上場後すぐに株式を売却し株価が大幅に下がってしまうのを防止し、一般の投資家が不利益を被らないようにするのが目的です。
では、IPOにロックアップがかかっていると、どのような効果が期待できるのでしょうか?